東京少年 (新潮文庫) 作者:信彦, 小林 新潮社 Amazon 『東京少年』小林信彦著を読む。まるで山下達郎の楽曲のようなタイトル。 第二次世界大戦で日本が敗色濃厚となった頃、東京・両国から、埼玉の山奥へ集団疎開することになった少年と弟。ふだんの小学校では優等生だった彼も、集団疎開といういわば「異界」では、たちまち、プライドも地位も剥奪されてしまう。同じ作者の同じテーマの作品『冬の神話』をかつて読んだものとしては、『冬の神話』では、密閉された世界で、行き場のなくなった子どもたちの残虐な暴力性のみがうっすらと記憶に残っている。 しかし、この作品では、そういう場面も出てくるが、静かな文体で書かれ…